カニ釣り
カニを釣っていた。
なんとなく川べりを散歩して、昔じじいに連れられてテナガエビを釣ったことを思い出していた。
あの時は本当に楽しかったな〜〜釣りしたいな〜〜と思ってふと地面を見ると、誰かが捨てて行ったカニ釣りの残骸があった。
ヨシのような枯れた植物の短い茎で作られた竿に裁縫用の糸が括り付けられているとても粗末なものだった。
紐にメンマのような謎の餌が残っていたので試しに使ってみることにした。
川には生き物が住めるようにと植物が植えられている場所がある。そこにハマガニみたいな小さな蟹がたくさん住んでいる。
そこに餌をたらすとすぐにカニが飛びかかってきた。蜘蛛みたいにぴょんぴょん飛んできた。ハサミで餌をがっしり掴んだので持ち上げると簡単に釣れた。
すぐにヨシ製の釣竿が壊れてしまったので、近くに落ちていた小さな釣竿サイズの流木に紐を括り付けて続けた。釣竿が植物に引っ掛かりまくって使いにくかったけどね😅
釣りをするのは十年ぶり。楽しくって一時間くらいそれで遊んでいた。
釣り上げたカニを地面に放して観察していた。脱皮したてなのかわからないけれど、刃先が透明なカニがいた。
体の大きなカニはとても元気が良くて、餌をたらすと必ず食いついてきた。何回か繰り返すうちに逃げて行ってしまったけど。
手足がかけまくっているカニを釣って申し訳なくなった。ボロボロの体でご飯を捕まえた!と思ったら釣られてショックだったでしょうね。
皆自分の家がわかるみたいで、ちゃんと自分が元いた場所に帰って行った。
夕方になるにつれて全くつれなくなった。餌を垂らしても無視。みんな寝る時間だからか。やっぱ餌に警戒しているからか。
釣りをしたい欲求はもうなくなった。もうずっと釣りはしないと思う。カニ釣りで命を弄んだ罪悪感に駆られたので…。ゴミはちゃんと持ち帰った。
今思うとじじいと一緒に行った釣りで生き物にひどいことをたくさんした。主にじじいがひどいことをしていたんだけど。
釣ったハゼをキャッチアンドリリースせずに、じじいは身近にあった水溜りに入れて放置。持ち帰るわけでもなく。釣った魚は戻してはいけない、そういうルールでもあったのかな? だとしても魚を川でもなんでもないところに置いていくのはかわいそうだ…。
私がコツを掴んで釣りまくったテナガエビはじじいが欲張って全部持ち帰った。でも調理をせずにずっと放置していたので、冷蔵庫の中で腐って全部ダメになって捨てた。これは本当にもったいない。自分があんなに釣らなかったら…とテナガエビのことを考えるたびに思う。
そういう自分は叔母からもらった料理の存在を忘れてよく腐らせているのでこんなこと言ってられないワ。生き物に優しく、勿体無いを減らせる人に私はなりたい。おわり…。