チョコを返さなかった訳

バレンタインデーが近づくと嫌でも思い出すことがある。

それはまずいチョコをもらったこと。

 

 

忌まわしきEちゃんと図書券友達とその他二人の子から、中学何年の時か忘れたがお菓子をもらった。

学校で渡されたのだけれど、バレンタインにお菓子をもらう機会が今までになかったからめちゃくちゃ嬉しくって家に帰るのが楽しみだった。

 

 

図書券の友達はチョコボールをくれた。外側はココアパウダーっぽいもので覆われていて、中にしっとりしたチョコが入っていた。

でもその味が…強烈なタバコ風味だった。

噛んだ途端タバコの吸い殻のような灰っぽい匂いが鼻に広がった…。

その子の家は親がタバコを吸っているみたいで、いつも服からタバコ臭がしていた。まさかタバコの匂いがチョコに染み付くなんて思っても見なかった。

味は美味しいけれど、2個ぐらいで匂いに耐えられなくなった。だから残り全部を喫煙者で鼻の効かない祖父にあげた。

 

 

Eちゃんからどんなチョコもらったのか忘れたが、匂いだけはよく覚えている。

食べた瞬間、生乾きの汗のような酸っぱい匂いとおならのにおいとトイレの芳香剤の匂いが脳を刺激した。

本当にこんな匂いがした。

小学生の時よくEちゃんちに遊びにいっていたんだけれど、彼女の家結構匂いがきつい。汗臭い酸っぱいにおいとそれをカバーするような芳香剤の匂いが常に家中に充満していた。

長居すれば鼻は麻痺るが、外に出ても鼻に匂いがこびりついてなかなか取れない。服にも染み付く。そんな強烈な匂いがする場所で作るんだからああなってしまうのも仕方ない。

匂いのせいで味がわからず無茶苦茶不味かった。

ちょっと食べて(これ以上食べると体がもたない)と思い、お菓子に謝りながら全て捨てた。祖父に食わせて体に障るようなことがあったらまずいからそのまま捨てた。

いままでお菓子は美味しいものだと信じて疑わなかったので、結構ショックだった。まずいお菓子って本当に存在するんだな…と驚愕した。

 

 

その他二人の子がくれたお菓子は美味かった。

一人の方は何をもらったのか全く覚えていないが、もう一人の子がくれたお菓子は変な匂いがしなくて本当に美味しかった。

カラースプレーがまぶされたパンケーキとクッキーの中間のようなお菓子だった。クリームが挟まっていて、手作りなのにお店に陳列されているような綺麗な見た目で味も美味しい。

100点満点中1000点。一人感動していた…。

 

 

私ももらっておいて返さないのも良くないな…と思って手作りの何かをあげようと思っていたが、まずいお菓子を食べてから作るのを断念した。

私の家も中学の時は(そこまできつくないと思うけれど)独特な匂いが漂っていたし、冷蔵庫は腐った魚の臭いがするから二の舞をするのが嫌だった。

既製品をプレゼントしようか?と思ったけれど、それをあげることでまた来年手作りのお菓子を二人からもらうことになったらどうしよう…と思い誰にも何も返さなかった。

 

 

それなのに中三の受験期の時、Eちゃんがなぜか私にバレンタインのプレゼントをしようとしていた。

お返しはできないと断っても大丈夫だよ!と言いあげる気満々だった。

チョコ好き?て聞かれて苦手ーと答え、手作りのお菓子を作られるのを回避した。いろいろ答えているうちにパイン飴をもらうことになってしまった。

でもバレンタインを過ぎても勉強が忙しいせいかEちゃんから飴をもらうことはなかった。ほっとしたわ…。

 

 

食べずに捨てて申し訳ないが、仕方なかったのだ…。

衝撃すぎてあの味をいまもありありと思い出すことができる。それで少し気持ち悪くなる。

Eちゃんもなんなんだろうな。直前までこんな感じだったのに最後あたりで突然仲間はずれ的な扱いをされたのが本当、いろいろと意味不明でキツかった。

でも、もう彼女に会うことも家の匂いを嗅ぐことももうないから安心だ。タバコ味のチョコを食べる機会ももうないでしょうし。

意識しないようにしているのに最近も夢にEちゃんがでてきた。私がいる場所はもう戦場じゃないし、いつか夢の中でも安心できるようになったらええな…。チョコの味も忘れられたらないいな…。